[Jazz & Popular] サックス奏者 萩原隆 official site

マウスピースの構造

ボアは、音の太さに直接影響するとともに、マウスピースのコントロール性にも関わる、重要な部分です。ここの容積が大きい方が、比較的太い音が出ます。そういった物を「ラージボア」と呼びます。

 

チェンバーは、吹き口から入った息が、ボアに入るまでに通る道筋です。ここの容積が、音量や音の明るさなど、音色のキャラクターを決定づける重要な意味を持っています。容積が大きいと内部でも良く音が響くので柔らかく太い音になりやすいですが、反面、息をたくさん必用としダークな音色になります。鳴りよりも響きの成分の方が比較的多くなります。また、容積が少ないと、少ない息で大きな音を出せ、音色は明るくなります。こっちは逆に、響きよりも鳴りの成分が多くなります。


これは、容積に反比例してマウスーピース中の息のスピードが増していくことと関係があります。

チェンバーの容積の少ないものを「スモール・チェンバー」と呼び、スモール・チェンバーにするためにバッフル面がせり出しているものを「ハイ・バッフル」と呼びます。

 

チェンバーからボアにかけての構造が、かなりの部分でマウスピースのキャラクターを作っています。容積を増やせば響きは良くなり、柔らかい音になりますが、息の速度が遅くなるので、リードを鳴らすパワーは減ります。それを補うためにたくさんの息を使ったり、パワーの出やすいリードを使ったりするケースも多いです。

 

チェンバーを小さめにして、ボアをしっかり広く取ることで、パワーと響きの両立を狙った、ハイブリッド的なマウスピースがありますが、やや直線的な音になりやすいので、奏者側のコントロールで柔らかさを出す奏法も必要になります。


メタルのマウスピースなどは強度が保たれているため、ラバー製よりも肉薄に削りだしてあります。そのために、マウスピースの外観から、ある程度は中の構造(容積の大きさ)が分かるでしょう。

ハイ・バッフルでスモール・チェンバーのものは、外観もほっそりしているはずです。
(テナーサックスの方が、分かりやすいですね。)

 

オープニング(ティップオープニング)の広さも、音量や音色に関係します。
開きの広い方が息もたくさん入り、音量も出せますし明るめの音がしますが、それに伴い息の量も必要になります。

あまり開きが広すぎるとコントロールするのが難しくなり、狭すぎても鳴りが悪くなったりするので、自分の実力でコントロールが効く範囲で、広めのものを選ぶと良いでしょう。


それぞれのマウスピースには、売れ筋のオープン・サイズがあります。お店で聞けば教えてくれるので、それを参考にしてください。

 

あと重要なのが、リードとのバランスです。最適な相性のリードが見つかれば、少々のサイズの差にこだわる必要はないでしょう。あくまでも相方(リード)あってのマウスピースですので、吹きやすく、コントロールしやすいセッティングが見つかったらそれを大事にしましょう。

 

 

マウスピースを選ぶ

マウスピースを選ぶには、どの楽器に付けて吹くかがとても重要です。楽器によっては、吹いたときの抵抗感が違いますので、それに合うマウスピースも変わってきますし、リードの合わせ方も変わってきます。必ず、自分の楽器で選んでください。具体的に言うと、入門用の楽器などはかなり軽く作られている場合が多く、パワーのあるマウスピースを付けると鳴りすぎ(音が割れたり、オープンな音色になりすぎたり)たりする場合もあります。その場合でもリガチャーやリードでバランスを取れる場合が多いので、まったくダメという訳ではありませんが注意が必要です。

 

そういった理由からも、使用する予定のリガチャーがあるのであればそのセッティングで試奏してください。リガチャーだけで、抵抗感が変わってしまいます。

 

マウスピースのメーカーや種類によって音色が異なるのは、材質や、内部の形によって、息の流れや、リードの振動のしかたが違うからです。オープンの広さによる音色の違いもありますが、オープン サイズは、それぞれのメーカーのマウスピースの中で選べるようになっているので、音色の傾向がまったく変わるというほどではないと思います。

 

好みの音色のマウスピースが見つかったら、吹きやすいオープンの広さを探しましょう。ただし、1枚のリードでマウスピースを選ぶと、そのリードに合ったマウスピースにだけ好感を持ってしまうことになりますので、いろいろなリードとの組み合わせで試した方が好ましいです。もちろん、使うリードを絞ってからマウスピースを選ぶことも意義があります。ただしこれは、リードの性格などをよく考慮して、自分のスタイルに合うリードを理解してからの方が良いかもしれません。

というのも、リードの性格は、マウスピースの違い以上に音色の方向性を決定する要素が強いからです。

 

リードはメーカーによって削り方のバランスや求めるサウンドが違うので、同じ番号でも、硬さや鳴り方、マウスピースとの相性まで変わってきます。できるだけいろいろなもので試してみましょう。

 

リードの硬さとは、絶対的なものではありません。あくまでも、マウスピースとの相対的な関係の上での硬さなのです。セルマーのC*(標準的なサイズ)のマウスピースでは3番のリードは柔らかいかもしれませんが、同じセルマーでも、F(広めのオープン)のマウスピースでは今度は硬めに感じるはず。

 

まあとりあえず、リードは2番~3番で選べば、大体の感じはつかめると思います。ジャズ系のマウスピースは、大体5~6番を中心に売れていると思うので、そのあたりのサイズで選んでみてください。
(マウスピースによってサイズの表記も微妙に違ったり、同じ番号でもサイズが違ったりはしますので、あくまでも吹いてみた感じが最優先です)

 

 

オモリの恐怖!!

昔、テナーの選定を頼まれて楽器屋さんに行きました。その時の大昔のレポートですが参考になれば幸いです。

 

#1.試奏

ある日、東京の楽器屋さんにテナーサックスを買いにいきました。この時点では、セルマーのスーパーアクションのシリーズ2と、シリーズ3が平行して売られていました。(※この時点では、3が出て間もないのでモデルチェンジですぐに2は無くなるものと思っていました)

試奏に使用したマウスピースはセルマーのDで、バンドレンの3半のリードをあわせていました。 吹いた感じは、シリーズ3の方がだいぶ管体が薄くつくられている感じで、明るい音はしますが、ちょっと音がまとまりにくい感じです。 それに比べると、シリーズ2の方が安定感があり、吹奏楽などではこっちの方が違和感なく使えるかなと思いました。(もちろん奏者の体力やセッティングで3の方が楽に鳴らせることをメリットに感じることもあるでしょうが・・)

 

この時の購入者は、吹奏楽での使用をメインに考えていたので、やっぱ、こっちだな・・と思ったその瞬間!!!! なんと、楽器のキーの指をのせる部分の貝殻の付いた部品が、ポロッと・・・。みんな、唖然としていました。さすがに新品の楽器でこんなことは、いや、新品でなくてもそんなには起こらないでしょう。でも、まあ今は、シリーズ2か、3かを選ぶだけだから、いいやこのまま吹いちゃえ・・・と思ったその瞬間!! なんと、音色が変わってしまいました。 急に、薄っぺらな音になってしまったのです。

 

#2.オモリの恐怖

はずれた部分は、貝殻と金属とが合体したマーブルチョコレートほどの大きさですが、そうです、これが楽器のバランスにも大きく影響していたのでした。(ちなみに、左手薬指のキーだった) 実は考えれば当たり前のコトで、楽器屋さんで見かける、音質改善のために楽器につける「おもり」と要は一緒なのです。 右手の親指のフックや、左手の親指を置く部分を金属に換えたり、さらには、マーチング用の小さい譜面台を固定するネジのところに金属パーツを固定したり・・・。

 

とくに楽器の上の部分に行けば行くほど効果絶大!まだ楽器全体に振動が伝わらないうちに、振動を止めてしまうのだから!(つまり左手のキーは効果絶大だったのだ) これは諸刃の剣で、場合によってはとんでもなく悪影響が出ます。楽器のバランスが変わるというだけで、別に「必ず良くなる」というものではないのです。ちなみにボクは、このオモリのせいでえらい目にあったんです。左右の親指を支えるパーツを金属に換えて、ぜんぜん鳴らなくなってしまったことが・・。

 

基本的にはあのオモリは、楽器の鳴り(振動)を止めることで、音が荒くならないようにするものなのです。たしかに響きの成分は向上するかも知れないですが、「楽器は、鳴らしてなんぼじゃ~っ!」と思っている人で、柔らかめのリードをしっかりストロークさせて吹くのが好む人には向かないと思います。むやみにオモリをつけるのはやめましょう。

 

バランスを考える上で重要なのが、マウスピースと楽器のバランスです。 マウスピースとリードのセットが決まると、必然的に出せるパワーもある程度決まります。このパワーが大きければ、重たい楽器(オモリを付けた物も含む)を鳴らし切ることも可能ですが、薄めのリードを合わせるセッティングでは、マウスピース単体でのパワーはそれほど絶対的ではありません。 こんな場合、重たい楽器にセットすると音量はかえって小さくなっているハズ。

 

重たい楽器に向くのは、硬めのリードでゴリゴリ吹くタフな人でしょう。こういう人は、オモリをつけることにより楽器の抵抗が増えるので、かえってリードが振動しやすくなって吹きやすくなると思われます。

 

そのほかは、「ジャズ用のマウスピースに変えたけど、コントロールしきれないで、音があらっぽくなっちゃう・・」とか、「開いた音をなんとかまとめたい」とか、楽器がマウスピースのパワーに負け気味で、ベル(管体)が薄いかんじの音になっちゃう!」という人には有効かと思います。

 

ちなみに、ボクのテナーのセッティングでは、セルマーのシリーズ3は管が薄く、使ってるマウスピースとの相性で、ちょっと音が軽くなってます。シリーズ2に合わせるとバッチリなのに・・。 こんな場合は、オモリをつけるポイントによっては改善されるかとも思います。ネックの仕上げの違いも影響しますので、銀メッキや金メッキのネックに替えてみるのもアリかと思います。メッキは、楽器の表面に金属の層が更に1層くっついている訳で、オモリと近い方向の影響が出ますので、ご参考まで・・。

 

 

リガチャーの恐怖

 

この話は「オモリの恐怖!!」からの続きです。

 

そんなこんなで、とりあえず楽器はシリーズ2に決まり、リガチャーを換えてみてびっくり。というか、これも知っている人にはあたりまえの話かもしれない・・・。知らない人は、これを読んで早く気付いてください。

 

とかく人は、ブランド志向であったり、高級志向であったり、人と違うものを持っていることに喜びを感じるもで、特に自分のこだわっているのもほど、そういった傾向は強くなるのであります。これは否定できないでしょ。でも、楽器に関しては、気をつけないとちょっとやばいかも・・・。

 

クルマのパーツでもそうだけど、オプション的なものとか、社外品とかの方がカッコイイし、性能も良かったりするよね。(クルマでも、もちろんバランスは大事だけどね)

 

そんなノリで、楽器にもカスタムに励む人は多い。純正じゃないリガチャーとかカッコイイ!!と嬉しがってしまう傾向はあるんじゃないかなぁ。とくに、こだわってる人と、ミーハーな人はその傾向が大。(ごめんなさい。でもボクもそうでしたので自戒を込めて・・)

 

別に、後づけものを否定するつもりはありません。 場合によっては、すごく効果的なこともあると思います。 ですが! ちゃんとオリジナルのバランスと比べて、それよりもイイと感じたときに買いましょう。 買い換えることを前提にして選ぶのはやめましょう。 現状に不満がないのに、なんとなく換えたいってのはやめましょう。 この日は、ハリソンのリガチャーを試しました。リガチャーにもいろんなタイプがあって、オモリの時と同じようにマイルド指向の音色になるものもあります。逆に、よりリードが振動しやすいように設計されている物もあります。 マイルド指向のリガチャーを、音が荒っぽい人が使えば、まろやかな音になったりはするでしょう。 ただ、バランスが変わるので、オモリのように鳴らなくなるってこともしばしば。その可能性をつねに考えながら試奏しましょうね。 この時も、ハリソンに換えてみて、やっぱり鳴らなくなった・・・。 チョーマイルドなのである。 そこで、もしかしてとひらめいた! 楽器をシリーズ3に換えてみたのだ。シリーズ3は、音がまとまりにくく、ちょっと散りぎみだったので、このセッティングだとバランスがとれるかも・・・、と思ったらやっぱりそうだった! シリーズ3の散りぎみだった音がまとまって、太く安定した音になったんです。 でも、ちょっと抵抗感が強く、しっかり吹き込めない人には大変そうなバランスだったので、最終的にはシリーズ2で、リガチャーはセルマーの純正のものにしました。 メタルのマウスピースなどで、もうちょっと音をまとめたいというときには、リガチャーを換えることは効果的ですが、むやみに換えるものではないことは、オモリと一緒。それよりも、多少高価ではありますが、ネックをゴールドプレートにしてみた方が良かったりするかも・・・。 ちなみにボクは、テナーはシリーズ3で、マウスピースはブランチャーを使っている。ブランチャーは、オプションでワイヤーのようなリガチャーが出ている。マウスピースに付属のリガチャーは、ゴムベルトのような感じで、この場合、オプション品の方が音が程良くまとまり、その分パワー感もあがった感じで、このワイヤーリガチャーはマル。 教訓 楽器のパーツは、 イメージで選んではいけません。

Haggy's Instruments

 

●ソプラノサックス

Yanagisawa Elimona S-880

Selmer super session (E)

Vandoren traditional

 

●アルトサックス

Selmer super action 80 serie 2 [silver plate]

Claude Lakey 4*4

Ponzol

 

●テナーサックス

Selmer super action 80 serie 2 [silver plate]
Dave Guardala MB2

Marmaduke SC2

Legere

 

 

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